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ノブナガ

どうしてこうなった。
 被害総額はもう考えたくない。目の前で金髪の悪魔と同レベルの悪魔がカカカカと笑い声をあげている。
 笑い声ではあるのだが、自分は一切楽しくない。

 もう一度言おう。
 どうしてこうなった。



 時間は遡る。今日は予め約束した日で、ノブナガに家に招待をした。
 手土産を持ってくるようなタイプではない。もちろん身ひとつである。誰か連れてくるわけでもなかったので、すこしホッとする。
 だがノブナガにあってみて、食わず嫌いをして、他の旅団員を遠ざけなくてもいいかもしれない。と少し思い直しつつある。今のオレは特に何の制限もない。

 ノブナガはどかりとソファーに腰を下ろすと「いい部屋だな」といい、珈琲を出せば「うめえ!」と褒める。
 さすが強化系。口と脳が直結でわかりやすい。

「そういえば、シャルのやつから伝言があるぜ」

 ふと思い出したように彼は切り出す。メモ用紙を渡されそれを見れば簡単な依頼だった。口頭でも言える程度の事だったのだが、ノブナガいわく記号のような言葉は覚えきれん。とのこと。分からなくもなかったので、納得した。

「これ、急ぎだって?」
「そうだとよ」
「シャルならすぐに出来そうなことなんだけどな」

 首をかしげる。
 時間にしたら30分もかからないでわかるだろう案件である。人に頼むぐらいなら自分でやればいいだろうと思う程度の簡単な作業。しかも急ぎだというのならなおさらだ。

「それでこの前の貸しを帳消しにする。とか言っていたな」
「ひどく良心的すぎて、逆に怖いんだけど。まあこれでいいっていうのなら、助かるか。悪いけど少し待っててくれる? すぐ調べてくるから」
「ここで待ってるのも退屈だから、見に行ってもいいか?」

 オレは少し考えて、了承をした。大きな間違いだと気が付かずに。
 シャルがそんなに甘い悪魔なわけがないのである。



 数分後。
 仕事部屋としている部屋で、軽い異音が響き渡る。

「ノブナガ何してんのさ!」
「あ? 大したことしてないぞ。少し触っただけだ」
「触っただけで、なんでパソコンが壊れるんだよ!」

 パチパチとパソコンを操作している背後で何かをしている気配は感じた。だがパソコンは簡単に壊れるものではない。

「やわっちい作りだな」

 頭をカリカリとしながら、難癖つける。

「それ高いのに」

 涙目になりながら、おとなしくして、パソコンには触らないで。とお願いする。
 だがすぐに違う音が聞こえる。

「今度は何!?」

 デジガメが床におちて、粉々になっている。何がどういう展開を通せばそうなる!

「見てたらおとしちまってよ」

 カカカカと笑うが、こちらは笑い事ではない。

「なんだ。落ちたぐらいで壊れるのか。機械というのは根性がねえな」

 そういう問題じゃないはずだ。一体何が起きているのだ? 普通は落としたぐらいじゃ壊れない。

「お願いだから、なんにも触らないでくださいっ」

 そして必死に涙を浮かべながら、懇願に至るまでの時間、残り20分ほど。
 シャルナークの依頼を果たして、ハッキングができたのは20分の予定が1時間かかり、更にその先のメッセージが、

『修理代は払わないよ。byシャルナーク』

 そう書かれていて、非情にうなだれた。
 計画的犯行か! そうなのか! このノブナガという男は機械と、とてつもなく相性が悪いらしい。機械クラッシャーだ。それをシャルナークが知らないわけがないのだ。

「あんの! 金髪の悪魔! 絶対しかえす!」

 心にきめて絶叫をした。



 追伸。仕事部屋の扉には「ノブナガは入るべからず」の札がその後張られる事になる。

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