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「シャルー。お願いがあるんだけど」
クロロとオトモダチという雇用契約モドキをむすび、腕試しでシャルナークを紹介され、友人になるまでの行程は大きくはちがわない。
ただ雇用契約は少し形をかえているが。
『貸しをたかくつけるけど、それでもいいなら話ぐらいはきくけど?』
「にこやかに黒い微笑みを浮かべなくても分かってるよ」
電話の先の声がすごく楽しそうである。顔をみなくても想像がつくというもの。だけど、こちらのシャルナークとは付き合いがまだ長いとはいえない。彼は『よくわかったね』とケラケラと笑った。
『で、貸しを作ってもしたいお願い事ってなに?』
「毒が欲しいんだよね。定期的にほしいから信用の置けるところ紹介してくれない?」
『うーん。一応心当たりはある。ちょっと奥まったところにあるけど、地図をメールでおくればいい?』
「奥まったって、アングラ的な?」
『毒だし、当たり前だろ?』
「シャル……オレ実は方向音痴なんだ。地図が読めないんだ」
『はいはい。そうですか。大変だね。頑張って♥』
「だから人の不幸を楽しそうにしないでくれ。ハッキリ言おう。そんな場所に行ったら間違いなく絡まれる。しかも何度も!だから一緒に行こう。そうしよう」
『ラクルは無駄に弱そうだからそうかも。だけど、オレも強面ってわけじゃないからね。その辺り分かってる?』
「オレ一人より100倍マシだから!」
『……その力説、どうかと思うけど。でも、そんなんでどうやってそのハッキングや暗殺技術を身につけたのさ。他人を褒めたくないけど、足音はしない、オレ以上にデータ仕入れてくるわで、意味不明すぎるんだけど』
呆れた声でシャルナークは言う。だけど、付き合うよ。と最終的に言い出してくれるから、こいつはいいやつである。
待ち合わせはヨークシン4番街の片隅にある喫茶店である。
早めに到着し、飲み物をすすってると見覚えのある金髪頭がやってくる。そしてその背後にもう一人ちょんまげがいる。
2人は揃ってこちらにやってくるわけであるが、一瞬財布を掴んで逃げ出そうとしたが、思いとどまった。
というのも、他の旅団員にはあいたくない。という契約を結んでいないのだ。今の自分がゾルディックではないので、行動の制限は少ないのである。
「こいつノブナガ。んでこの弱そうなのがラクル」
シャルナークがにこやかに紹介をする。弱そうなのは余計だと思うが、仕方ないかもしれない。ノブナガの視線がささる。
「叩いたら潰れそうだな」
「あははは。確かにそう見えるよね。震える兎みたいでよわそうだけど、一応平均以上には強いから安心していいよ」
兎は余計である。だけどビクビクしてる自分もいるので、言い返せない。
もとより人見知りはする。さらに相手は自分が勝てない相手で、直情的な強化型。強化と放出系みたいな体育会系は苦手なのである。
「よろしくお願いします」
ペコリと挨拶をする。シャルナークいわく「オレがいたところで、横にカモネギがいたら変なのが寄ってきそうだしね。面倒事はごめんだから護衛役として見た目に怖い奴つれてきた」ということだ。
正論過ぎて言い返せません。
そしてオレ達は目的の場所へと歩き出す。どんどん町並みが汚くなり、ガラの悪い連中が増えだし、顔を隠す人間が増えてくる。
チラリと観察してくるが、ノブナガ効果なのか特に口出しはしてこない。
ノブナガは最初こそ鋭い眼差しで観察はしてきたが、下手にでるオレに「弟分的なもの」みたいな位置づけをしたかんじで、気軽に話しかけてくる用になった。もとより兄貴分な性質なのだろう、「離れんなよ」と保護的な発言もだす。
基本カカカと笑いと無骨で、言葉を選ばないのだが、思ったより付き合いやすい性格らしい。
何事もなく、目的の薬屋にたどり着く。光を嫌う性質のものが多いため、地下であり蛍光灯の量も控えめである。
「いらっしゃい」
店主が中から出てくる。思ったより若い女性である。シャルナークとは顔見知りらしく、挨拶をかわした。そして紹介をうける。
ノブナガは毒に興味がないらしく、棚に並んでいるツボをつまらなそうに眺めていた。
店主に適当に挨拶をすませる。一見さんお断りというわけではないが、こういう裏世界では横のつながりが地味に強い。丁寧に接するに限る。
どういうものが必要かというのに、自分は以前使っていた銘柄をいくつかあげ、さらに飲食用に使用する毒のため、この程度という範囲の毒をいくつかピックアップしてもらった。
銘柄のある毒はそのまま使えるが、飲食用のものはゾルディック特性の配合だったのだ。入手はできないので、新しく見つけていく必要がある。軽めからためそうと、可能と思われるより2ランクほど下げてお願いした。
ほどなくカウンターには大量の毒が並ぶ。
その様子をシャルナークは興味深そうに見ていた。
「オレは念の関係上、毒を自分で使用することってないんだよね。だけど旅団の役割柄、入手とか情報とかは仕入れているけど、こうやって選ぶ様子を見るのは面白いね」
店主がわかりやすくするためだろうか、猛毒ほどツボの色が濃くなっている。ラベルには銘柄が。物によって、液体だったり粉状だったり色々だ。
店主さんにお願いして、小皿を用意してもらう。いくつかの銘柄を実際出してもらい目と匂いで確かめる。
無色無臭のものが多い。
「うーん」
毒を指先に軽くつけ、ペロリと舐める。
「はっ?」
「え?」
シャルと店主が同時に声をあげた。
刺激も少なく、浸透具合も悪くなく、後味もいい。これはいい毒だな。と、購入を決意して店主をみたら目を丸くしていた。
「あのう、解毒剤お持ちしましょうか?」
「いらないけど?」
なめたのはかなり弱いものである。一般人でも軽くしびれて動けなくなるぐらいだ。
「さっきの毒……」
「分かってるけど?」
首をかしげて何をいまさらと思う。
だが一瞬で、はっと思い直す。
「一応毒の耐性は少しなら持っているんだ。だから大丈夫」
「そうですか」
店主はそういう客が多いのだろう。すぐに納得したが、シャルはムスーと膨れていた。何か気にいらないらしい。ぐちゃぐちゃと髪をかき乱してくる。
「生意気!」
だそうだ。意味分からない。
毒をなめた感じは良質である。指定銘柄は購入でお願いし、食用予定のものはいくつか小皿に出してもらう。
指定したいくつかは顔をまじまじ見られ、それでも平然としていると、店主はなにかものを言いたそうにしたが小皿にだした。
いくつか手に出してなめてみる。
「それも舐めるの?」
「もちろん」
少し強めのやつを手を出したら、シャルナークは吃驚して声を出す。
「お強いですね……」
店主も呆れ顔になってきた。
まだ余裕の範囲である。だけど目的は食用であるし、慣れていないものである。ペロリとなめてこの辺りで妥協しようと、その薬を多めに頼む。
「あのこんなに買われますと、先ほどの解毒薬じゃ物足りないと思うのですが」
「いいのいいの。これは自分が毒ならしに使う食用調味料だから」
平然と答えたら、店主は「人は見かけによらないものですね」と肩をすくめてきた。見かけは見えないということですね。言われなれてますよ。
シャルナークといえば、思いきり足をだしてきて自分を背中からける。おかげで体制がよろけてしまったわけであるが、
「ラクルのくせに生意気」
と言い残して去っていく。
名言再びである。
更に言えば、シャルナークの様子に不思議がってやってきたノブナガが、後2、3品見繕おうと毒をぺろりとなめたところでやってきて、慌てて水をおしこみ、指をつっこみ吐き出させようとしてきて、胃液が逆流するかと思った。
「おめえ、弱っちい癖に何やってるんだ。吐き出せ」
と必死になってくれるので、文句をいうわけにもいかず、思いの外、面倒見のいいのだと再認識した。
一応訂正するが、能力者の中でも平均以上だ。旅団とかゾルディックとか化け物じみたやつらを平均にするなといいたい。
そして涙目になりながら、ノブナガを抑えようとしているが、力は全くかなわず、シャルナークに助けを呼んだら、あいつゲラゲラ笑って見てるだけだ。ひどすぎる。
金髪の悪魔は健在である。
「これくらいの毒なら大丈夫だから。慣らしてあるから」
必死になってノブナガをとめて、分かってもらったわけであるが、ケホケホとむせ込みは止まらない。
「最初に言え。あほう」
挙句の果てになじられた。だが嫌味はなく、素直に謝罪した
「いい買い物ができた。ありがとう。ノブナガさんもすいません。迷惑かけてしまって」
「貸しひとつ忘れんなよ」
「暇だったからな。かまわねえよ」
シャルはいつもどおりで、ノブナガはツンデレなのだろうか。
そしてくるりと背をむけようとしたら、ノブナガに引き止められた。
「今度家でも教えろよな。定住してるような変わり者が一人ぐらい知人の中にいてもいいだろうしよ」
どうやらトモダチが一人増えたようだ。
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